第15回骨盤外科機能温存研究会抄録

第15回骨盤外科機能温存研究会抄録

期 日:平成17年7月15日・16日
開催地:名古屋市
会 長:加藤 知行(愛知県がんセンター消化器外科)

【ビデオシンポジウム1】『他科に学ぶ骨盤外科手術-開腹手術』
Ⅰ:拡大自律神経温存広汎子宮全摘術
癌研究会癌研有明病院 レディースセンター 婦人科
加藤友康

原発巣切除後の骨盤機能温存には自律神経系のnon-touch温存が最善である。子宮頸癌0-1A期例には単純・準広汎子宮全摘が適用され、自律神経系はnon-touchにて温存される。癌の浸潤が頸部に留まるIB期例には、基靱帯血管部のみを切断する自律神経温存広汎子宮全摘術が適用される。基靭帯神経部を残すことで骨盤内臓神経のnon-touch温存を図る。癌が傍子宮織に浸潤しているIIB期例には広汎子宮全摘術が適用され、その切除範囲は骨盤内臓神経・骨盤神経叢まで及ぶため術後に排尿・排便障害を来す。今回IIB期例に対して、S3の骨盤内臓神経を露出温存・骨盤神経叢とその膀胱枝を部分温存して排尿機能保持を図る拡大温存術式を考案した。

Ⅱ:浸潤子宮頸癌に対する妊孕能温存手術abdominal radical trachelectomy
慶應義塾大学 医学部 産婦人科
福地 剛、青木大輔

若年の初期浸潤子宮頸癌患者を対象とした妊孕能温存術式radical trachelectomyでは、子宮動脈および卵巣動脈の血流を完全に維持したまま、標準的な広汎子宮全摘術と同様のリンパ節郭清を行い、膣の一部から子宮頸部のみを広汎に摘出する。次いで血流も含めて温存した子宮体部と膣管を再建するものである。その際に、将来的な流早産のリスクを軽減する目的で、子宮体下部を縫縮形成している。また、QOLを考慮して排尿に関与する自律神経を温存している。
過去の22例において、1例に子宮性無月経を認めた以外では術後月経は回復している。また、妊娠を希望した3組中1組で妊娠、出産を経験した。排尿機能に関しては術後一過性の排尿障害を認めた例はあるものの、永続的な自己導尿例はない。

Ⅲ:直腸固有筋膜、腱中心を意識した前立腺の処理がもたらすもの
国立がんセンター中央病院泌尿器科
藤元 博行 

前立腺全摘おいて尖部処理は、切除断端を確保し、十分な尿道機能を温存しながら確実な尿禁制、止血を確保する必要があり、この手術のポイントである。前立腺全摘あるいは男性の膀胱全摘において直腸固有筋膜、腱中心を意識した前立腺の処理法を確立した。この方法は前立腺尖部をバンチング処理による前面からのアプローチのみ頼らず、直腸固有筋膜を展開し、直腸筋層を同定し、腱中心を理解することで前立腺尖部背面を正確に同定することにより、前立腺尖部全体の剥離断端の確保を可能とするとともに、腱中心といわゆる直腸尿道筋との離断を確実に処理し、尿道後面における直腸損傷の危険性を最小限にしている。その実際を供覧した。

Ⅳ:前立腺全摘術における海綿体神経再建術の長期成績
東北大学・大学院医学系研究科 泌尿器科、形成外科
斎藤誠一、並木俊一、沼畑健司、佐藤信、石戸谷滋人、伊藤明宏、新宅一郎、中川晴夫、海法康裕、館正弘、山田敦、荒井陽一

04年6月までに施行した前立腺全摘術症例のうち、適格事項に該当し、電気生理学的に神経温存・非温存を確認できた、切除側への片側神経移植9例、両側神経温存16例、片側温存(移植なし)20例を対象とした。性機能評価はUCLA-PCIを用いた。Age-matched analysisでは、性機能の長期の回復率は、両側温存例、移植例、片側温存例の順に良好であり、術後12ヶ月以後、移植例はさらに性機能の改善傾向を示したのに対して、片側温存例は、低下傾向を示した。

Ⅴ:当科での直腸がんに対する 自律神経温存側方リンパ節郭清術
山形県立中央病院 外科
佐藤敏彦、池田栄一、須藤 剛

当科での側方リンパ節郭清は、腹側から#273:総腸骨動静脈の腹・内側面、#272:内腸骨動静脈腹・内・外側面、#262:上膀胱動静脈分枝より尾側の内腸骨動静脈内・腹側面で、下膀胱動静脈と骨盤神経叢が密接する部分まで、#282:内外腸骨動静脈分岐部より尾側の内腸骨動静脈の外側面で、閉鎖神経を温存しつつ骨盤底まで、電気メスと鋏を主に使用している。特に、自律神経周囲ではできるだけ損傷しないように、鋏で鋭的に行っている。

Ⅵ:進行下部直腸癌に対する自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清の標準術式
国立がんセンター中央病院大腸外科
赤須 孝之

抄録未提出

【一般講演1】『骨盤内臓器手術における再建術』

1:S状結腸癌膀胱浸潤に対する膀胱部分切除後のEndoGIAを用いた回腸U型パウチによる膀胱拡大術
名古屋第一赤十字病院 外科
竹内英司、小林陽一郎、宮田完志、後藤康友、三宅秀夫、山田達治、石川玲、宇野雅紀、三宅隆史、雄谷慎吾

回腸を用いて約40cmの有茎小腸を作製し、これをU字型にたたんで内側をLembert縫合にて固定した。それぞれの小腸に約1cmの穴をあけてEndo GIA II 60-3.5 を6個使用しパウチを形成した。左尿管にステントチューブを挿入し尿管とパウチを吻合し、残存膀胱の大きさに合わせてパウチを開き4-0PDSを用いて結節縫合にて吻合を行い、ステントチューブは前壁から腹腔外に誘導した。

2:膀胱浸潤を有する直腸、S状結腸癌に対する手術術式の検討
獨協医科大学第一外科
椿昌裕、渡辺理、藤田昌紀、砂川正勝

膀胱全摘、膀胱部分切除術が施行された直腸癌、S状結腸癌7症例の手術術式や予後をretrospectiveに検討した。対象:対象症例はS状結腸癌2例、直腸癌5例。結果:病理組織学的に膀胱浸潤陽性と診断された症例は5例でリンパ節転移陽性例は4例。予後:リンリンパ節転移陰性の2症例は術後2年以上再発無く生存中である。結語:膀胱浸潤陽性であってもリンパ節転移陰性例では根治手術によって長期予後が期待できる。

3:直腸・膀胱切除時に膀胱再建を行った2症例
帝京大学医学部外科
安達実樹、松田圭二、荒井武和、山田英樹、大見琢磨、白 京訓、野澤慶次郎、味村俊樹、小平 進、冲永功太

症例1:35歳,女性。子宮頚癌手術+放射線療法後に腸閉塞,両側腎瘻に至った。膀胱頚部を残して骨盤内臓器切除を行い,回盲部代用膀胱,結腸肛門吻合を行った。現在自己導尿。症例2:60歳,男性。膀胱右側に浸潤した直腸S状部癌に対し,膀胱右半・右尿管切除を伴う低位前方切除術を施行した。回腸嚢を代用膀胱として尿路再建し,自力排尿可能。 両症例とも,ストマ回避,尿路禁制保持により,良好なQOLが得られた。

4:Double-barreled wet colostomy(単一ストーマによる尿,便分離型尿路変向術)の経験
1) 神鋼病院泌尿器科,2) 同外科
田口 功1)、寺川智章1)、今西 治1)、山中 望1)、坂野 茂2)

【目的】単一ストーマによる尿、便分離型尿路変向術であるdouble-barreled wet colostomyにつき検討する。
【対象と手術手技】膀胱腟直腸瘻、S状結腸癌膀胱浸潤および直腸癌膀胱浸潤の3例を対象とした。下行結腸によるloop colostomyを造設し、その遠位端の約10cmを結腸導管として利用した。
【結果】便が結腸導管に混入することはなく、持続的な尿の排泄と間歇的な有形便の排泄が得られた。
【まとめ】本法のポイントは,ストーマの後壁を皮膚と同レベルの高さに保つことにより、単一のストーマでありながらも尿と便の排泄路が分けられる点である。これにより、従来のwet colostomyの問題点である水様便の持続的排泄が避けられる。本術式はダブルストーマを避ける選択肢のひとつと考えられた。

5:子宮全摘術後の膣断端脱に対する膣断端仙骨固定術におけるメStraight-Inモの使用経験
関西医科大学医学部泌尿器科1)、福島県立医科大学医学部泌尿器科2)
大口尚基1)、日浦義仁1)、川喜多繁誠1)、福井勝也1)、木下秀文1)、嘉村康邦2)、松田公志1)

膣断端脱に対して メStraight-Inモを使用して膣断端仙骨固定術を施行した。これは28cmのシャフトの先端に縫合糸のついたねじを装着し、回転させて仙骨に固定する。
まず膣断端、仙骨前面を被う腹膜を剥離。メStraight-Inモにて縫合糸を仙骨に固定する。膣断端部と仙骨の間にメッシュをtension-freeに留置する。腹膜を縫合し手術を終了した。
術中後合併症は認めず、今後腹腔鏡下手術への導入も可能である。

【一般講演2】『骨盤内臓器手術における再建術』
6:高齢者直腸癌に対するJ型結腸嚢再建の長期排便機能
近畿大学外科
吉藤竹仁、肥田仁一、松崎智彦、服部高史、上田和毅、石丸英三郎、
安富正幸、塩崎 均、奥野清隆

目的:日本は世界一の長寿国であり、直腸癌患者の3割が70歳以上である。直腸癌手術の8割を占める前方切除において、高齢者のJ型結腸嚢再建(J)の長期機能を評価した。
方法:術後3年に肛門縁から吻合部までの距離1〜4cmと5〜8cmに分類し75歳以上と60〜74歳、59歳以下のJの機能を排便スコアーで比較した。
結果:75歳以上のスコアーは良好で差はない。しかし、下剤/浣腸の使用は肛門縁から吻合部までの距離が5〜8cmの症例で75歳以上が有意に多い。
結論:高齢者に対するJの機能は、肛門縁から吻合部までの距離が5〜8cmの症例において下剤/浣腸の使用が多くなること以外はコンチネンスを含め良好である。
7:下部直腸癌に対する内肛門括約筋切除を伴う肛門温存術のための直腸肛門部の局所解剖の検討
藤田保健衛生大学 消化器外科
小出欣和、前田耕太郎、花井恒一、佐藤美信、升森宏次、青山浩幸、勝野秀稔、船橋益夫、鎌野俊彰、安形俊久、野呂智仁

下部直腸癌に対して、癌根治性を保ちつつ肛門機能を温存する手術を行うために直腸肛門部の解剖学的特性について検討を行った。対象は、剖検体5例とMiles術症例19例の病理標本とした。方法は,剖検体では恥骨尾骨を経由した正中矢状横断面と、肛門管側面の縦断面を作成し、Miles術症例の病理標本と共にH-E、SMA、ミオグロビン、AZAN染色を行った。検討の結果、肛門管前方の連合縦走筋部では、明かなplaneは確認できず、ISRを行うには、連合縦走筋の取り扱いに充分注意し、病変の部位や深達度を考慮して剥離層を選択する必要があると考えられた。これらを基にISRを28例施行してきた。観察期間は短いものの現在吻合部再発は1例も認ず、肛門機能も良好である。

8:腹腔鏡補助下結腸全摘術における回腸直腸機能的端端吻合  
兵庫医科大学 第2外科
柳生利彦、柳 秀憲、池内浩基、野田雅史、吉川麗月、外賀 真、中埜廣樹、内野 基、大嶋 勉、橋本明彦、田中慶太、山村武平

腹腔鏡補助下結腸全摘、回腸直腸吻合術4例において回腸直腸機能的端端吻合を施行。吻合は骨盤腔において残存直腸を可及的に剥離授動した後に回腸末端と残存直腸の小切開部に自動縫合器を挿入し側側吻合した後、縫合器挿入孔に数針の糸で牽引し自動縫合器を用い吻合を完了する。平均吻合時間は12分。合併症は認めず。簡便で短時間で施行可能で体位の制限や狭窄により肛門からの器械操作が不能な症例にも可能で有用であった。

9:直腸早期癌(sm癌)に対する究極の低侵襲根治戦略
1)亀有病院外科、2)たむら記念病院
畦倉 薫1)、高橋 孝2)、石川博敏1)

小開腹法、腹腔鏡補助下大腸切除術超えた新低侵襲手術術式を2つ考案した。1)広範間膜切除を伴う直腸局所切除術(BME法):経仙骨的直腸の局所切除に広範囲の直腸間膜切除を付加した術式。19例に施行。2)小開腹法(wound traction法、WT法):創外より小切開創(7cm)を斜上方に牽引しD2~3の直腸切除、切断術までを行う。30例に施行。気腹、頭低位が不要で、高度癒着症例も適応。治療戦略:Rb~PではSMm(massive),N(-)またはsm2~3,N(-)であればBME局所切除。術中病理で切除間膜がn転移(+)ならWT法(AR, LA R)に変換、転移(-)では局所切除。Ra~RsではSMm、sm2~3癌はWT法を施行。

10:完全直腸脱に対するEndopath EMS Stapler を用いた直腸固定術
洛和会音羽病院大腸肛門科
宮崎道彦

【はじめに】完全直腸脱に対する手術は大きく分けて経肛門的(経会陰的)と経腹的
に分けられる。しかし再発率は圧倒的に腹的術式が低いとされている。今回我々はEndopath EMS Staplerを用いて直接仙骨骨膜に直腸間膜を固定する直腸固定術(Kuromizu,1994)を開腹下に行った一例を経験したので報告する。
【症例】76歳、女性。主訴:直腸の脱出、固形便の失禁(毎日)。現病歴:半年前から直腸の脱出があり登院初診となる。現症:肛門に約10cmの直腸の全層脱出(TuttleⅡ型完全直腸脱)を認めた。
【手術】全身麻酔下+硬膜外麻酔下に手術を行った。開腹したところダグラス窩は深く、少量の腹水を認めた。直腸及びS状結腸を剥離、遊離した後、本症例は術前の注腸検査でS状結腸の過長を認めていたためS状結腸を約20cm切除、吻合を行った。
直腸を充分に頭側に吊り上げつつ、肥厚した余剰の直腸間膜をEndopath EMS Stapler
で第1第2仙骨前面骨膜に直接固定した。固定は直腸の左側9箇所、右側2箇所にstanplingを行った。最後に底上げする形で腹膜を縫合形成しドレーンを留置、3層に閉腹し手術を終了した。
【術後経過】患者は術後2日目から飲水を開始し17日目に退院した。現在再発はなく外来通院中である。
【結語】本術式はメッシュなどの人工物を使用することなく簡便に固定できる方法であると思われる。

【ビデオシンポジウム2】『他科に学ぶ骨盤外科手術-腹腔鏡手術』
Ⅰ:鏡視下前立腺全摘除術
慶應義塾大学泌尿器科学教室
中川 健

抄録未提出

Ⅱ:精巣腫瘍に対する腹腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)
名古屋大学泌尿器科
服部良平

精巣腫瘍に対する腹腔鏡下RPLNDについて検討した。Stage I(embryonal cell Ca. V+)6例の手術時間は3.3時間、出血量は63mlであった。2例に転移がみられ、化学療法を施行した。7例で原発巣摘除術後の腫瘍マーカー正常化後にRPLNDを施行した。手術時間5.1時間で、出血量は513mlであった。病理組織では1例にembryonal cell Caで化学療法を行い、3例でfibrosis,3例ではmature teratomaであった。

Ⅲ:直腸癌腹腔鏡下手術
虎の門病院 消化器外科
沢田 寿仁

手術例の81.2%、449例に直腸癌腹腔鏡下手術を行っている。手技の主体は上方郭清術
と直腸授動術。直腸切離、吻合は小開腹下に行う。郭清術、授動術共に従来法と遜色
ない。開腹移行率3.6%、偶発症率1.6%と安全に行えた。開腹創は平均6.2cm、従来法
と比べ、手術時間の延長はなく、stageⅡ+Ⅲa,bの5生率は、腹腔鏡85.4%、従来法71.
6%であった。

Ⅳ:直腸癌に対する機能温存を考慮した腹腔鏡下手術の現況
大分大学消化器外科
猪股雅史、衛藤 剛、白水章夫、安田一弘、白石憲男、北野正剛

【目的】直腸癌に対する腹腔鏡下手術において自律神経温存を踏まえた手技の実際と治療成績を報告する。
【手技】1)上下腹神経叢・腰内臓神経を温存しS状結腸授動とIMA切離、2)左右下腹神経・骨盤神経叢を温存し直腸固有筋膜を露出する層で剥離、3)直腸間膜の処理・切離・吻合【治療成績】厚労省がん研究助成金多施設共同研究では、直腸癌541例中、開腹移行率は5%、術中・術後合併症は4%・14%、根治度Aの再発率6%、5年生存率はstage I、 II、IIIそれぞれ95%、86%、81%。【結語】腹腔鏡下手術は長期成績で開腹手術とほぼ同等で手術の安全性も保たれているが、吻合手技の安定化が今後の課題である。

Ⅴ:子宮癌に対する腹腔鏡補助膣式広汎子宮全摘術および術後下肢リンパ浮腫予防手術の開発
東京慈恵医科大学付属柏病院
佐々木 寛

抄録未提出

【一般講演3】『骨盤内手術におけるトラブルへの対応』
12:骨盤内拡大手術における周術期経過と合併症対策
大腸肛門病センター高野病院・外科
山田一隆,緒方俊二,久野三朗,福永光子,佐伯泰愼,志田誠一郎、
谷村 修,高野正太、柴田直哉,辻 順行,高野正博

骨盤内悪性腫瘍(直腸癌30例、局所再発直腸癌55例、他9例)に対して骨盤内拡大手術(骨盤内臓全摘術、仙骨合併切除ほか)を行った94例を対象として、周術期経過と予後について検討した。術後合併症に関しては、感染性疾患・尿路系疾患・腸閉塞・その他に大別され、在院死1例(1.1%)と再手術2例(2.1%)はいずれも感染性疾患であった。これらの合併症への十分な対処により、良好な予後を有する安全な術式であると思われる。

13:直腸癌局所再発に対する骨盤内臓全摘出術後に合併症を繰り返した1例
東京医科歯科大学 大腸肛門外科
石川敏昭、安野正道、樋口哲郎、角崎秀文、飯田聡、植竹宏之、榎本雅之、杉原健一

我々は、直腸癌局所再発に対する骨盤内臓全摘出術に合併した骨盤死腔炎による回腸縫合不全、及び、これに対する再手術後の回腸導管損傷部の縫合不全を経験した。
初回手術後の縫合不全は、骨盤死腔炎の炎症が回腸吻合部に波及し、発生した。再手術時には、吻合部が骨盤内に落ちないように頭側に固定した。
再手術時の回腸導管の損傷部は、縫合閉鎖し、導管内にドレーンを留置したが、減圧が不十分で縫合不全が生じた。回腸導管からの排尿量よりも腹腔内への尿の漏出量の方が多く、再々手術も検討したが、透視下に留置した回腸導管ドレナージチューブの持続吸引により回腸導管の孔は自然閉鎖した。
我々が克服したトラブルの対処法について報告した。

14:骨盤手術後動脈性出血に対する対応−FFバイパスを要した症例の経験からの考察
静岡がんセンター 大腸外科,消化器外科*
山口茂樹、長田俊一、森田浩文、石井正之、齊藤修治、前田敦之*、上坂克彦*

70歳、女性。1995年stage2結腸癌に対し結腸右半切除。2003年12月再発疑いで当院紹介受診。術前診断は単発性腹膜再発。2004年2月高位前方切除、子宮、左卵巣尿管内腸骨動静脈合併切除、空腸間置による尿路再建。POD12:縫合不全確認。POD14-20:ドレーン出血と下血あり血管造影3回施行するも出血部位不明。POD21:人工肛門造設。POD24:肛門と人工肛門から大量下血し出血性ショック。緊急手術にて原因は左外腸骨動脈の穿孔で縫合閉鎖。POD34:再度出血性ショックとなり、左総腸骨動脈結紮、FFバイパス施行。POD51近医転院。術後1年3ヶ月健存、外来通院中。

15:前立腺全摘除術後の膀胱尿道吻合部直腸_に対し経肛門的手術を施行した一例
愛知県がんセンター中央病院 泌尿器科部1)、同消化器外科部2)
加藤康人1)、脇田利明1)、金光幸秀2)、平林淳1)、林宣男1)

症例は65歳男性。前立腺癌(cT2a,N0,M0:StageB1)の診断にて前立腺全摘除術施行。術中明らかな直腸損傷は認めず手術を終了した。術後5日目より尿混濁および水様便が出現し、術後13日目に膀胱尿道造影を施行した際、膀胱尿道吻合部から漏出した造影剤が小さな_孔を通して直腸に漏出していることが確認され膀胱尿道吻合部直腸_と診断された。保存的治療を行うも_孔は閉鎖せず、経肛門的_孔閉鎖術を施行した。術翌日より尿混濁は見られなくなり、_孔閉鎖術後16日目より経口摂取開始するも尿混濁および水様便認めず、_孔は閉鎖されたと考えられた。現在_孔閉鎖術後2年が経過しているが_孔の再発は見られていない。

16:経膣的に修復し得たPPH術後直腸膣瘻の一例
東邦大学外科学講座一般・消化器外科
金澤真作

症候性脱肛で直腸粘膜環状切除術(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids, PPH)は、日本でも多く用いられ、安全で有用と考えられている。今回、26才女性のPPH術後直腸膣瘻に対し、人工肛門造設せず経膣的に治癒し得た1例を経験した。直腸膣瘻は、腰椎麻酔下砕石位でのPPH術後23病日に確認され、当院紹介入院となった。根治術は腰椎麻酔下砕石位で、経膣的に直腸粘膜筋層、膣中隔および膣壁に分けて剥離、デブリートマンおよび縫合し瘻孔を閉鎖した。深くかかり過ぎたPPHのペッツによる炎症が瘻孔の原因と思われた。根治術前後の十分な腸内の洗浄、減圧が重要であると考えられた。

17:低位前方切除術後直腸膣瘻の1例
愛知県がんセンター中央病院 消化器外科
安藤公隆,平井孝,金光幸秀,小森康司,武藤俊博,加藤知行

[症例]81歳女性.[症例経過]直腸癌(Ra)に対する低位前方切除術(DST)一旦退院後,術後4週目に膣からの排便が出現し,直腸膣瘻と診断された.絶食,瘻孔へのフィブリン糊充填と肉芽掻爬により術後8週目には瘻孔は閉鎖した.[考察]低位前方切除術後の合併症としての直腸膣瘻はまれで難治性であるが,瘻孔径が大きくない場合,フィブリンを使用した保存的治療は有効であると思われた.

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